海洋空間佳本


死の泉 死の泉」★★★★★
皆川博子
早川書房

2008.7.12 記
私は時系列的に逆、先に「薔薇密室」や「冬の旅人」、そして「聖餐城」を読了してからこの作品を読んだのだが、それらと同種の空気を内包した、おなじみの皆川ワールド。
電車の中で音楽を聴きながらだとか、日常生活の合間の時間に細切れで読み進んでいくのがもどかしく、そして大層もったいなく感じられる耽美な世界。
頭の先から爪先までどっぷりと心身を沈めることこそが、皆川博子氏の長編小説の正しい読み方に違いない、と再確認した。
他の長編に比べて若干ミステリー小説としての色合いは強いようで、物語終盤の疾駆もやや意外ながら快い。
ただ、ご存知のように彼女は直木賞作家だが、はっきり“あっち側”の小説を書く人なのかなあ、と問うてみると、ちょっと疑問かも…。





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