海洋空間佳本


背中の蜘蛛 背中の蜘蛛」★★★★☆
誉田哲也
双葉社

2020.6.19 記
エシュロンなる超法規的通信傍受システムをアメリカが運用しているらしい…という都市伝説めいた話を小耳に挟んだのはいつ頃のことであったろうか。
本作では、警視庁がそれに類するツールを用いているという舞台設定において、男臭い警察ドラマがいくつかの事件を題材に繰り広げられる。
例えば横山秀夫氏が描く警察小説に比べると少しだけ湿度は低めかもしれないが、硬軟バランス良く配合された文章に仕上げられており、ちょっと懐かしくもある「ジウ」シリーズを思い起こしたりもした。
展開が若干グロいところもあって、その辺りの描写は個人的にちょっとオーヴァー気味かな、と感じたが、さすがの手練れだけに物語を通してリーダビリティは抜群で、娯楽小説としては極上のパッケージとなっている。





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