海洋空間佳本


きつねのはなし きつねのはなし」★★★★☆
森見登美彦
新潮社

2017.7.26 記
個人的に馴染み深い京都市左京区界隈を舞台に、日常と非日常が混濁する幻想的な世界が繰り広げられており、ヌルリと呑み込まれるように読み耽ってしまった。
文体、展開はもちろんのこと、各小編が何某かの部品で緩くリンクしているところや、天満屋まで登場させて有機的に仕上げられている点は、いかにも森見登美彦氏らしい。
すべての縦糸と横糸がほぐれてカタルシスが得られる、という類の物語ではないが、醸し出される空気も含めて、まさしく耽溺するにふさわしい作品だ。





戻る

表紙