デビュー作「近畿地方のある場所について」は非常に良くできたモキュメンタリー作品だったが、今作はそこに小説的な物語の深みが上積みされ、さらなるパワーアップを遂げている。
特に主要登場人物3人の造形が秀逸で、それぞれが抱える特殊性が巧く描き込まれている。
そして全体の構成は極めて精緻。
最後まで読み終えた後、途中で引っ掛かっていた各所の答え合わせを行っていくと、すべてが整合し辻褄が合い、その様式美に感動すら覚える。
普通ここまで気付かんやろ…という些細な伏線でさえ疎かにしていない。
終盤に置かれた敬一の元カノブロックを契機に、池田がプロットの根幹を成す呪いの輪廻と継承に組み込まれた一人であることが示され、また6月6日の命日の謎や、敬一が幼い時に放った言葉が何だったのかという疑問等に対しても見当が付けられるようになる…という流れは、まさしくカタルシス。
背筋氏はミステリー作家としても一流の手練れであるということを見事に証明した。
"寺社仏閣"という誤用はちょっと残念、最近大手出版社でも校正が甘い例が増えた気がする。 |