海洋空間佳本


神の手(上)神の手(下) 神の手(上)」「神の手(下)
★★★★☆
久坂部羊
幻冬舎

2014.10.2 記
医療の進歩と生命倫理というものは、必ずどこかのラインでせめぎ合う、背反する価値観のようなものだが、その葛藤を象徴する最たる具体例ともいえる、"安楽死"をテーマに据えた本書は、まさしく普遍性を持って老若男女遍く人々に訴えかけ得る。
老人の終末期においては容易に想像がつくが、実は患者が若くても、その若さゆえに安楽死が求められる状況がある、という説明に関しては驚いたし、医療従事者にしか書けない描写の一端として強く印象に残った。

小説技巧としては、神業のように卓越している、というわけではないけれど、一本調子ながら、根っこのストーリーが充分に面白いので、グイグイと先を読ませる。
"センセイ"の正体を始め、ミステリーとしてもちゃんと成立していると思う。
ただ、ちょっといろいろな要素を詰め込み過ぎていた嫌いはあったかもしれない。





戻る

表紙