海洋空間佳本


革命前夜 革命前夜」★★★★★
須賀しのぶ
文藝春秋

2016.2.9 記
舞台は1980年代末期の東ドイツ。
ある日本人留学生の目を通して、ドレスデンを中心に描かれるドラマは、実際には書き込まれていない周辺東欧諸国の熱気も含め、まさに革命前夜たる当時の生々しい空気をヴィヴィッドに読者に投げ掛けてくる。
そして文字通り重く暗雲が垂れ込めているかのような物語中のモノクロームの世界を、明確な映像として見事に表現しており、そこに絡んでくる主題の一つ、旧東欧世界で生き生きと躍動した音楽の存在が、また得も言われぬ素晴らしい役割を果たしている。
いくつか、主人公の言動がリアリティーに欠けて浅薄に感じられるところがあるものの、今の我々とは異なる時空に生きた人々が大きくて理不尽なうねりに翻弄されていったという事実に思いを馳せるきっかけを作り出してくれる、意義ある一冊だと思う。





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