海洋空間佳本


怪書探訪 怪書探訪」★★★★☆
古書山たかし
東洋経済新報社

2017.5.24 記
中盤以降は若干衒学的なところが気になり出すこともあったが、職業作家でないながらも総じて文章は適度なユーモアを交えて読み易く、ストレスなく古書蒐集の深みを覗く旅へと連れ出された。

分野問わず、マニアの世界というものは実に趣深くまた狂気に満ちていて、その筋の人にとっては常識の事柄がもちろん門外漢にとっては甚だ非常識だったりするので、そのギャップに驚くだけでも楽しかったりする。
私も本好きは自認するものの、新刊だけでも読みたいものをすべて追っかけることなど到底できておらず、ここに描かれているような古書蒐集の世界とはまったく無縁なので、出てくる本やエピソードは皆知らないことばかり、大変面白かった。
そして、これもまた他の趣味同様、ここまで古書集めに入れ込んでしまうと、途方もないお金と時間と労力が費やされるのだな…、ということもよく分かった。

本来的な古書蒐集の筋合いとは少し異なるが、私も子供の頃に愛読していたが、長い年月を経て今はもう失ってしまった書物たちにふと思いを馳せ、ああ、あの本とっといたらよかったなあ…、と軽い悔恨に包まれながら、古書店等でそれらを探してみることが度々あったりする。
この本には、そんな気持ちも想起させられた。





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