誤解を恐れずに言うならば、これはサイコパス小説である。
理由さえあれば人間を害することに対して抵抗は覚えないが、犬を傷付けることだけは何があっても絶対に受け入れられない、というタイプのサイコパスに備わる心理こそが物語の核となっている、という恐ろしい小説だ。
そしてここには、そのような犬偏愛型サイコパスに暗く深い共感を抱いてしまう私がいる。
松本も木戸も私も、そしてもしかしたら著者もあちら側…いやこちら側?
私からすれば、人間こそが生物界の頂点に立つ優越的な種だとみなし、社会の中でもぞもぞと蠢くマジョリティたちの方がよほど愚かだと感じるが、まあ一般的には今作中のサイコパスたちに共鳴する私のような者が相対的に歪んだ存在とされるのだろう。
さすがに金属バットで肉親を殴り殺して平気でいられる素養はないが…。
犬たちを通じて築かれていく人間関係の描写がとても巧みでリアル。
ネット上の暴走が大きく関わってくる、という仕掛けも今やありふれた手法ではあるが、違和感のない範囲で上手く絡められていると思う。
確か帯に"犬は辛い目に遭いませんので安心してください"という旨の文句があったかと記憶するが、それはちょっと嘘かな…。 |