海洋空間佳本


シーザー・ミランの犬と幸せに暮らす方法55 シーザー・ミランの犬と幸せに暮らす方法55」★★★★☆
シーザー・ミラン
日経ナショナルジオグラフィック社

2018.12.19 記
私はナショナルジオグラフィックチャンネルでシーザー・ミランを知り、当時、犬は飼っていなかったにも拘わらず、「この男は犬の王か?」と思ってしまうほどの凄まじさにやられ、どっぷりと全シリーズにハマってしまったクチだが、その番組でおなじみの「運動・規律・愛情」という法則を始めとする様々なメソッドが出てきて、とても理解が容易かった。
無二の相棒だったダディとのエピソードも描かれ、その存在が大きかったことも改めて分かる。
彼のパックリーダー理論については、現在では否定的な見方も少なくないそうだが、"人間社会の中で犬の本能を封じることなく平和に共生する"という目的のために取る手段は、そこがどうあれ変わるものではないし、総体的に論じられている内容は一貫して合理的で説得力がある。
例えば、"犬が不安を抱えて落ち込んでいる時は慰めてはいけない"というような、人間としての思考パターンからすれば首を傾げてしまうような具体的な対応の提案も、なるほど犬にとってみればそういう捉え方なのか、と気付かせてくれる。
ただ、番組でも度々出てきた"エナジー"に関しては、本書においても同様に極めて抽象的な説明に終始しているので、そもそもが一定以上の素養を生まれながらに持っている人しか体現できないかも?
いずれにせよ、犬はいわば飼い主の鏡であり、犬の行動に問題が見られる場合、その原因は99%飼い主にあるから、人のトレーニングこそが必要である、という事実を犬と暮らすすべての者が認識しておかねばならない、というメッセージもダイレクトに伝わってきた。

気になったのは、不妊手術について、それによる疾病誘因の可能性には触れぬまま、メリットしかないという論調で語られている点と、こちらは翻訳及び校正ミスだろうが、原文の否定と肯定を丸きり逆に訳してしまったと思われる箇所が散見されたことかな。

シーザーについて言えば、彼自身の離婚という家庭の問題も、職業上、避けて通りづらい大きなインシデントだったが、彼なりの言葉でそれに触れられていたのは良かった。





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