海洋空間佳本


オーデュボンの祈り オーデュボンの祈り」★★★★★
伊坂幸太郎
新潮社

2007.11.8 記
ちょっと評価甘いかな。

私は遅ればせながらこの作者の小説を「重力ピエロ」、「アヒルと鴨のコインロッカー」、そして本作という順で読んだが、メジャーデビュー作品はこんなにもファンタジー色が強かったのか、と少し意外に感じた。
しばしば村上春樹が引き合いに出されるのもよく分かった、おそらくは影響を受けているのだろう。
悪い表現をすれば、粗い、というか、ストーリーのテーマに大きく関わってはこない些末な謎や仕掛けは曖昧なまま放っておかれている様なんかにも村上春樹作品に似たものを感じた。
どちらかというと伏線を細やかに張り巡らせてそれを作中で見事に集約させるタイプの近年の著者の小説には見られないパターンだ。

それにしても主要なサブキャラクターを務める日比野の魅力ったら一体なんだ。
断片的な情報から推察される彼の生い立ち、そして豊かで巧みな文章表現によってその表情までもがクッキリと読者の脳裏に浮かんでくる憎めないキャラクターなど、いろんなものが絶妙に絡まり合って、日比野の魅力をとんでもない高みにまで仕上げている気がする。

5つの星は、日比野に。





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