海洋空間佳本


Ank: Ank:」★★★★☆
佐藤究
講談社

2019.10.16 記
時系列のカットバックが細か過ぎて読み辛いなとか、主人公のキャラがイマイチ鼻につくし相方が欧米美人というのもステレオタイプ極まるとか、2026年の描写にしてはデヴァイスが古臭くないかとか、なんだか序盤は個人的なツッコミどころが多くてそればかり気になっていたが、肝心要のプロットそのものはとても出来が良く、また着想も間違いなく秀でていて、特に半ばを超えて終盤に差し掛かる頃には一時中断するのももどかしいほどにのめり込まされた。
大型類人猿の自己鏡像認識能力をキーとして、そこからアラームコール、StSat反復、言語の獲得、果ては人類の進化の道筋を辿る過去への旅…と縦横に拡散してゆく思考が純粋に面白く、またちょっとだけ怪しくなる部分もあるにはあるが、小説上の科学としての論理もギリギリ保っているように思われる。
どうにも哀し過ぎるアンクの最期、そして望の運命もまた。





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