海洋空間佳本


朱鳥の陵 朱鳥の陵」★★★★☆
坂東眞砂子
集英社

2013.1.6 記
ティーンエイジャーの頃の遠い記憶を呼び起こしながら、あるいは改めて歴史の教科書に載っていたような事柄を調べたりして読み進めていったわけだが、大化の改新前後からいわゆる律令制度に至るまでの数十年間を、ここまで書いていいのか? というぐらいドラスティックな解釈を施して再構築している。

坂東眞砂子氏はこの著作においても、女性の特異性というものに徹底的に着目して、物語を綴っている。
本当に、女の中に潜む情念を描くことにおいては、随一の技術を持つといっていいだろう。

おお、あの中大兄皇子が、中臣鎌足が、大海人皇子が藤原不比等が、という具合に歴史ミステリーとして充分読み応えがありながら、最後はやっぱり一級のホラー作品としても成立するように仕上げている。
終盤の持統天皇の怖さといったら、「黒い家」の菰田幸子ばりだ。

登場人物たちに関しては、近親婚姻が多く、呼び名も長じるにつれて変わることもあるので、常に相互の関係性を頭に置きながら読まなければならないのがやや疲れる。
また、読後感は決していいものではない。





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