海洋空間壊死家族2



第75回

栴檀   2005.7.14




栴檀は双葉より芳し
欺瞞はすべからく驕慢に遷移す

藍は藍より出でて藍より青し
嫉妬は肉欲より厭離し肉欲よりあさまし



このあいだ遅れ馳せながら女性専用車両というものに乗った。
いや、ちょっとええかっこしすぎた。
私もご多分に漏れず電車が到着してドアが開いたときに、あぁっ! ここ・・女性しかいないやんっ! 

と気付いて隣の車両に飛び移ったクチなのである。
しかしあれは「扉が閉まりますご注意ください」の扉にBダッシュ、あと少しで乗れなかったときくらい

、いや、それ以上に、スーパーのレジで精算中にひとつシナモン返すくらいの勢いで、謎の微笑を必要と

する恥ずかしさというものがある。
しかもここにおいて、果たして鉄道会社と女性陣がそれをワレワレ男性に強制しているというココロガマ

エと責任感をよっぴて負っているのか? というと、ある意味ライトかつフェザーなおふざけ感があって

、ひとつもふたつも納得できない感じがするのであるが一体どうなっているのだろうか。

せきこむように通常車両に乗りこんだあと、なぜ私が慌てて隣の車両に移らなければならないのか、3秒

ほど考えて、なんだかある意味、非常ーにむかっ腹ついたので、これを機会にその横の車両から女性専用

車両というものをしつこく観察してみることにした。
少しでも変なことしたらここに書いてやんだカンナ・・、連結部分をはずしてハンカチ振ってやんだカン

ナ・・、と思いつめた表情の男が車両のつなぎめでギンギンに目を光らせていたのである。

しかし思っていたようなことはなくて(どんなことを思ってたんだ?)、混雑した車両の横で少し余裕の

ある乗車空間を誇ったかのような女性群集と、まったく不細工なモノクロ焼付女性数名と、周囲の状況に

気付いていないおじいちゃん数名という、おおまかには車内は3種に大別できる感じであった。
思うにあの車両に乗ってる女性も多少乗り心地悪そうなのである。
そりゃ普通の神経してたらとなりでヒイコラ言ってる人間の横でソフトクリーム舐めながらバーカなんつ

って余裕こいて電車に乗れる人間てなかなかいないものである。
凝視していると、なんともばつの悪そうな、自分の書いたあみだくじで一等取っちゃった胴元みたいな風

情でクネクネおしっこもったそうにしている女性がちらほら見える。
具体的に言うと、知らない同士で、まあ・・ねえ・・と言う感じで目配せし合っている。
ただ、今のうちだからこそそういう空気が流れているが、人間は楽な方へ楽な方へ流れる生き物である。
女性専用車両というものに乗り組んでいるうちに、日本女性が持っている、あるいは持つべきなにがしか

の心意気というものが失われていく可能性というものは極めて高い。
羞恥と謙譲の心も必然と驕慢の俗人的「群れ」感覚へと、トーゼンのごとく置き換わっていく未来を思う

と、胸ふさがる気がしてくるのである。
特に女子高とかオンナの園的なところって一度踏み外すとそのまま奈落へと落ち下っていってしまう悪徳

と堕落の循環計算のような、とどまるところを知らない恥知らず、つまりオバチャン化乗数が高いから、

ココロザシある女性はまったく気をつけていなくてはならないのである。

まあ今回はこれくらいで許したろか・・という負け犬的な視線泳法で自らの車内に目を移すと、ハナシは

突然周回するが、夏休みに向けてのビッグイベント紹介としてのウルトラマンショーの広告が目に入って

きた。
コックローチのような甲殻頭をしているウルトラマンがどうやら最新版のようで、つまりガンダムでいう

とマラサイのような頭(余計意味わからんか)のウルトラマンが主人公のようなのである。
その後ろにずらりと見知った顔のウルトラマンたちが並んでいて、いや、それ以上に知らない親戚のよう

な十数人のウルトラマンがいて、もうウルトラ一族の歴史というものは何がなんだか訳がわからなくなっ

ている。
しかしあの種族って遺伝方法がイマイチ不明なのである。
人間として考えるとまったく似ていない兄弟たちなのである。
ゾフィーとウルトラマンはよく似ている。
セブンとタロウもよく似ている。
しかしウルトラマンとセブンて、オランウータンとボノボくらいの種の離間感覚がある。
きちんと同じ母から生まれたのかもよくわからない。
だいたいあの母ってペギー葉山なのよな。
それはともかくあの乱脈兄弟を見ていると、よほど母親がいろんなとこ行ってたのか、あるいは後カンブ

リア期の種族の爆発のようにDNAのコピーに基づかないような遺伝方法の宇宙民族なのかという気もし

てくる。

その車両広告の宇宙民族の肖像並びを見ていると、ふとこの電車の未来というものもなんだかそういう不

確定な乱脈融資による車両種類乱立の時代がやってくる予感があるのである。
具体的には、この時代に生まれた女性専用車両というものも、遺伝を複雑に重ねて最終的にはもっと細分

化された、たとえば、着替え車両とか二度寝車両とか化粧車両なんかに分化していくような気がするので

ある。
今、電車の中で化粧している女のヒトて多いけれど、それをおやまあと見ている人間が悪徳化されて追放

、鉄道警察にしょっ引かれる、あるいは逆隔離される時代もありえないとは言えない。
そのうちエスカレートした車両編成は、女性と男性、若年と老年、痴呆と賢人、スギ花粉症とカモガヤ花

粉症、半袖と長袖、などなど階級・嗜好・ライフスタイルによってプラグマティックにアンチノミー化し

ていって、そのチャンピオンシップ(配分比率)を巡ってすさまじいデッドヒートが繰り広げられるかも

しれないのである。
しかも、おそらくは、私の属するサラリーマン車両は床下か石の下か、あるいは天井裏にでも残っていれ

ばめっけもんなのである。





戻る

表紙