第3回 大きいつづらと小さいつづら、両方もらえ! 2003.8.14
《今回の名言》
まずいラーメン喰ってみたりするのもさぁ、なんかおもろいじゃんよ
〜OVA『フリクラ』(「フリクリ」シリーズvol.6)
京都はいいねぇ。
千年王城って言われるだけのことがあるよ。
その昔、京都は都で陰陽師たちがワンサカいて
土御門家の人が霊的防衛を張って
外部からの呪いやら式神なんかが入ってこないようにしてたんだって。
ATフィールドみたいなもんかな?
違うね。
違うんだけど、まぁ、外から怨霊が入ってこなくなったかわりに、
呪術合戦の結果増えまくった中の怨霊が外に出なくなったんだと。
昔何かの本で読んだ。
晴明神社が流行る前だよ、キッズ達。
それとは関係ないと思うんだけど京都ですっごいまずいものを食べてきた。
嬉しかったなぁ。
この出逢いに感謝!
店の名誉のために言っておくが、俺は間違いなくワクワクしていた。
本当に楽しくもスペクタクル満載の小一時間だった。
ぜひまた行きたいと思っている。
京都の某所にある本当に目立たない食堂である。
まさに食堂という名称がピタリと当てはまる店だった。
ちょっとした用事で友人Sと京都に出向いたのだが、
晩飯時を少しばかり逃してしまった。
色々と飲食店を覗いてみたが、
空いているのはカップルじゃないと入りづらいお洒落100%の店だったり、
馬鹿にするなと言いたくなる気持ちを
グッとこらえないといけないような高価な店だったりと
俺の楽しい夕飯は絶望的に思えた。
これも大人の試練か、ドチクショウ。
トボトボと歩いていると妙に薄暗い通りに出くわした。
道の真ん中で浮浪者が取っ組み合いをしている。
意外と活気があるじゃないか。
そんな通りの端っこにワクワク食堂があったのだ。
店の表から見たときのインプレッションカラーはグレイ。
『俺達は白でも黒でもない』というキャッチコピーのロックバンドではない。
灰色だ。
B級生活を送る俺様にぴったりの面構えだ。
よおし、気に入った。
中が見えなくても混んでいる様子が全くしない。
最高。
店の表にあるショーケースに蝋細工のイミテーションが並んでいる。
ここでざるそばなんか頼んだりしたらすっごい迷惑な顔するんだろうなぁ。
見たいなぁ、その顔。
え?これカツ丼なの?
実物見たいなぁ。
よし、カツ丼に決めた!
Sはカレーにするというガッツを見せた。
…カラカラカラ…おっちゃんまだいける?
銀ぶち眼鏡でぽっちゃりしてて覇気が3%くらいの大将に尋ねると「いいよ」とのこと。
店の中は想像を超えていた。
なんだろう。
雰囲気は70年代で、ある意味ノスタルジック。
ていうか全てが古い。
この店だけ時間に取り残されているんじゃないかと錯覚すらしてしまう。
すごい当たりくじを引いてしまったではないか。
無意味に大きな水槽があるが水草とコケを栽培しているとしか考えられない。
エアポンプは作動しているのだが泳いでいるはずの魚類が見当たらないんだもの。
やべぇ。
何か緊張する。
こりゃもう引き返すことは絶対不可能だ。
…「何しましょ」大将が覇気4%で注文を取りに来る。
俺はカツ丼に決めていたが、
なんとなく壁に貼られた手書きのメニューをグルリと見た。
すんごいのを発見。
「カレー天丼」。
え〜っと、何これ?
表のイミテーションケースにはなかった。
うむぅ、エビフライカレーというものが世の中には存在するのだから、
エビ天が合わないこともないかもしれないが、絶対不味そうだ。
…Sが涙を流して笑いをこらえている。
しかも何か目配せをしているではないか。
GOサインだ。
…ええっと、カレー天丼二つ!
…言ってしまった。
そして15分後に運ばれてきた「カレー天丼」は
キッズ達の想像通りの食物だったのさ。
天丼にカレーがたっぷりかかってるんだよ?
もちろん皿じゃなくてドンブリに盛られての登場。
健康マニアの人が見たら絶句するくらいの油分。
カレーのスパイスとテンプラの衣のハーモニーに
俺とSはぷるぷる震えたのだった。
大将グッジョブ!
だが、もう少しやる気出そうぜ!
てなわけで今回の台詞は「フリクリ」シリーズから。
前回に続き今回もちょっぴりマニアック!
アニメビデオなんだけど、6話で完結しています。
制作はガイナックスです。
知らない?
じゃあ「新世紀エヴァンゲリオン」は知ってるでしょ?
アレ作ってたアニメプロダクションです。
と言うことは恋に揺れまくる少年が出るの?
出ます!
年上のお姉さんは出てくるの?
出ます!
ロボットは?
もち出ます!
使徒は?
何だかそれっぽいのが出ます!
ただ「エヴァ」とは全く違う出来になっております。
基本的にはコメディ。
しかも上質!
マニアックなエッセンスを惜しげもなく放り込んでいるんだけど、
それが分からなくても楽しい。
分かるとさらに楽しい。
なおかつ格好いい!
フィギュア化希望!
海洋堂で。
俺「エヴァ」はあんまり好きじゃないんだけど(キャラクターデザインはかなり好き)、
この「フリクリ」は6話通して20回くらいは見てるなぁ。
主人公は小学5年生のたっくん、
自称宇宙人のお手伝い・ハル子、
たっくんの兄の彼女・マミ美、
たっくんの頭から出てきたロボット・カンチ。
たっくんの日常生活とハル子の巻き起こす騒動を描いているんだけど、
今回も詳しくは言わん!
っていうかこのアニメはうまく説明が出来ん!
俺のライターとしての力量が乏しいとかそんなこっちゃなくて、
このアニメは見る人によって印象が違うんだろうなと思う。
とりあえずは賛否両論割れるんだろうなぁ。
俺のよく行くレンタル屋の「フリクリ」作品紹介には
『意味不明。だってガイナックスだもん。the pillowsの音楽はすごくいい』
って書いてあった。
…ひどいよね、店員。
愛想も悪いし。
でも確かにthe pillowsはいい!
絵と旨くシンクロしてるし、上手な使い方してる。
勉強になるなぁ。ホントに。
声優のキャスティングもいいし(松尾スズキ出てます)。
で、今回の名言
『まずいラーメン喰ってみたりするのもさぁ、なんかおもろいじゃんよ』。
うん、いい言葉だ。
みんなは最近まずいもん喰った?
あんまりないよね?
何十年か何百年か分かんないけど
昔ってうまいもんの方が圧倒的に少なかったと思うんだ。
で、今現在ってうまいもんが溢れてて当たり前じゃない?
外食とかしててたまにまずいもん出されると、損したとかムカツクとか言うけど
みんなそのまずさを饒舌に語るんだよ!
うまい店って「あそこの店おいしかったよ」って一言で終わるじゃん?
でもまずい店ってのは一言じゃ済まなくさせる魔力を持っているのだよ。
同じように成功談よりも失敗談が面白かったりする。
話すのも面白いし、聞くのも面白い。
たまに洒落にならない失敗談で聞いてて切なくて無性に海が見たくなることもあるが、
それは稀である。
失敗した瞬間は毛穴がパッカリ開いて脂汗が量産され連邦軍も滅ぶ勢いであるが、
何ヶ月かしたらそれも笑えるいい思い出になる。
ならないときはトラウマになる。
俺はたっくんと同じ年のころ、安パイを積んで暮らしていた。
何とか楽な方へ、障害が限りなくゼロの方へ。
逃避癖もあった。
それは中学卒業まであったのだが、
高校からは色々あってかなりわがままジュリエットになってしまった。
当然のごとく協調性も無くなった。
結果的に好きなものは好き、嫌いなものは嫌いと言えるようになったのだ。
で、その頃は嫌いなものは徹底して嫌いといっていたが、
ここ何年かはのるかそるかと言われたら、とりあえずのることにしている。
それがクソ不味いラーメンで
スープまで飲みきらないと大将の熱いコブシが飛んでくることになっても
それはそれで楽しめる余裕が出来てきた。
もう少し余裕が出来ると
大将のコブシをクロスカウンターで迎撃出来るようになるかもしれない。
で、店を出て帰り道に俺は言う。
『まずいラーメン喰ってみたりするのもさぁ、なんかおもろいじゃんよ』
…うん、最高の気分だ。
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『フリクラ』
(「フリクラ」シリーズvol.6)
原作:GAINAX
原案・監督:鶴巻和哉
脚本:榎戸洋司
作画監督:平松禎史
演出:佐伯昭志
音楽:the pillows、光宗信吉 |
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