第12回 兄貴のパチキで粉砕骨折♪パパヤパヤパ〜♪ 2005.2.20
《今回の名言》
聞いてくれたまえ、とりさん!
〜『フルーツバスケット』
『お願い事は子供の特権であり、それを棄却するのも親の特権である。』
のっけから名言風味を出してみたが、
これはあくまでも風味であって実の無い言葉である。
…だめだ…。
賢いフリは疲れてしまう。
みんなは小さかった頃、お父さんやお母さんにいっぱいお願い事をしたかな?
おもちゃ買ってー!
お菓子買ってー!
遊んでー!
テレビつけてー!
お腹減ったー!
お茶飲みたーい!
眠いー!
起きたくなーい!
仕事行きたくなーい!
…ってこれ、最近の俺じゃねーか!!
えー、まぁ、ノリ突っ込みも失敗したところで本題に戻ります。
俺は自分の思い出せる限り、両親におねだりとかしたことありません。
あったかもしれないが、しなくなったように覚えています。
というのは、どんなお願いごとをしても間違いなく却下されたからです。
その結果、親戚中から「なんて欲のない子供なんでしょう」と評価されたが、
あんまり嬉しくないレッテルだ。
ていうか、これって褒め言葉じゃないでしょ?
挙げ句の果てに、叔母さんに「アイス食べる?」と聞かれて
「いいえ、結構です。夕飯が食べられなくなりますので。」
…嫌なガキだな! ええ?
本当はいっぱいお願い事、おねだりがしたかったんだ。
アイスも食べたかった。
買って欲しいもの、見たいもの、行きたいところ、たくさんあったけど、
おねだりは出来なかった。
でも本当に一つだけ、たった一つだけ、両親にお願いしたいことがあった。
本当は弟が欲しかったんだ。
さて今回の名言は「聞いてくれたまえ とりさん!」。
この台詞は高屋奈月さんの花とゆめコミック
『フルーツバスケット』からのものです。
いわゆる少女マンガなのですが、男性読者よ、あなどるなかれ!
本当に面白くて、むちゃくちゃ泣けて、温かい気持ちにさせてくれるマンガです。
主人公は女子高生・本田透(とおる)と十二支の物の怪に憑かれた草摩一族の面々。
子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥に猫を加えた13人が登場してきます。
それぞれキャラの立った個性的な人物ばかりなんですが、
彼らは女性に抱きつかれると憑いている動物に変身してしまうという
特性を持っているのです。
そしてその秘密を偶然に知ってしまった本田透、
子憑きの草摩由希、猫憑きの草摩夾(きょう)、
この3人を中心に様々な思いと共に運命が回りゆくお話です。
この場で登場人物全員紹介して相関まで解説してたら大変だし、
何よりも読んでもらいたいです。
全編を通して名言が溢れています。
しかも確実に心に届く超A級名言ばかりで、
もしかしたらこのマンガで精神的に助けられた人がいてもおかしくないかも…
と思ってしまうほど。
だがしかーし!
俺が紹介したいのはB級名言であ〜る!
今回紹介している名言は、草摩由希の実兄であり、
巳憑きの草摩綾女(あやめ)の名台詞。
彼ら2人の過去は本当に辛い。
綾女は4、5巻で登場してきますが、本当に弟思いの人です。
ただすべてが過剰です。
王子様のような人です。
学生時代は生徒会長で通学は送迎車付きだったようです。
現在はコスチュームショップ(?)を経営する店長ですが、
本気で自信の塊のような人物。
しかし、そんな華やかな綾女兄さんにも、やはり心の奥底に後悔の念があります。
それは弟である由希。
過去において弟である由希は興味の対象外でした。
冷たくされた由希は兄が嫌いになってしまったわけです。
兄弟の溝というのはよくある話ですが、
綾女兄さんはこの溝を埋めようと思ったのです。
俺はこの「歩み寄る」という行為がすごく好きです。
本来憎しみ合うわけでないなら尚更大切な行為だと感じている。
その始まりは両者同時でなくていい。
片側からの歩み寄りで充分だと思う。
どんな形でもいいし、どんな方法でもいい。
受け入れてもらうことを考えずに、まずは自分から受け入れる。
実際、綾女は由希に疎ましがられているが、
「弟想いNo.1はこの僕さ!」と本人の前で言い切ってしまう。
この突き抜け感が彼独特の自信過剰キャラなわけだが、本当の魅力は優しさです。
どうしても華美な衣装や言動に隠れてしまいがちだが、
由希を訪ねる時の手土産は必ず由希の好物を持ってくる優しさであったり、
困っている由希をガッチリ最高のタイミングで助けてくれる行動力が
綾女の持ち味であろう。
真骨頂は由希の進路相談の話。
由希を嫌う実の母さえ入り込むことの出来ない彼の言葉は
確実に弟の気持ちを代弁し優しく包み込んでいく。
由希もそんな兄と触れて歩み寄ろうと努力していく…。
そんな時にでる綾女のB級名言、「聞いてくれたまえ、とりさん!」。
とりさんというのは辰憑きで医者の草摩はとり。
ちなみに彼と綾女、戌憑きの草摩紫呉(しぐれ)は大の仲良し3人組。
だから綾女は嬉しいこと(由希が心を開いてくれること)があると
必ずどちらかに電話を掛けてこう言うのだ。
紫呉に対しては「聞きたまえ、ぐれさん!」となる。
俺は男1人で、姉と妹に挟まれて育った。
決して仲のいい兄弟ではなかったが、
20才を越えて一つ屋根の下から出てバラバラに住み始めて以降、
楽しく話が出来るようになった気がする。
どうしてあんなに仲たがいばかりしていたのかな。
本当につまらない原因ばかりだったと思うけど。
だからではないけど、俺は男兄弟が欲しかった。
悩み事を聞いたり聞いてもらったり、2人で遊びに出掛けたり、服を共用しあったり。
仲のいい兄貴が欲しかったし、弟が欲しかった。
まぁ、無い物ねだりであって、
実際はやっぱりケンカしていがみ合ったり
何かしらコンプレックスを持ったりするんだろうねぇ。
それでもやっぱり綾女と由希の兄弟を見ていると、
そんなことをプカリプカリと考えてしまうのである。
『フルーツバスケット』は一見ファンタジックなものを題材にしていながら
人間の奥深いところにスポットを当て、
なおかつ暗い印象にはならないように料理できている。
各キャラクターの設定と相関がしっかり出来た上で
読者に伝えたいメッセージが込められている。
受け取るメッセージはそれぞれの読者によって異なってくるだろうが、
それでいいと思う。
人に対して「ありがとう」という気持ちを
大事にすることが出来るようになるマンガ、『フルーツバスケット』。
男性諸君は買いに行くの恥ずかしいかもしれんが、
しっかり読むように!
そしてこっそり泣くがいいさ!
俺のように!!
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『フルーツバスケット』
高屋奈月
白泉社
花とゆめコミック
1〜16巻(連載中) |
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