唐渡 KARATO
フレンチの世界で揺るぎないポジションを築き上げたシェフが、枠に囚われずに最高の素材と技術で料理を供したい...という思いで創られたキュイジーヌ、その名も唐渡 KARATOに行ってきた。
まず食べる前に、そこに至るまでの空間演出に感嘆する。
いわゆる"つかみ"でガツンとやられているうちに、今度は肝心の料理の数々が怒涛の勢いで襲い掛かってくる、そんな感じ。
イカ墨で黒く染まった白身魚、その横には30種類の野菜が刻まれて収まっている小さなグラス。
目に鮮やかな真っ赤なソースの海に浸る貝たち。
米を野菜の一種と捉え、海の香りとともに閉じ込めたリゾット。
カリカリに炙った表皮と芯温が絶妙に抑えられたコントラストが得も言われぬオオモンハタ。
野菜の味がきちんと底に敷かれたソースと抜群に合う、究極の焼き加減で仕上げられたシャトーブリアンとサーロイン。
デセールというべきかデザートというべきか、それに至っては最早私のヴォキャブラリーでは説明叶わず、謎の器に入ったシャーベットに、桃をくり抜いた器に注がれた桃のスープ、で勘弁願いたい。
どれもこれも、発想がとにかくユニークで、それでいて決して奇を衒っているわけではなく、そして恐ろしく手間が掛かっているだろうと容易に想像できるにも拘わらず、それが過ぎることなく、厳選された素材そのものの味が色濃く残されており、後味はむしろすっきりとでも表現すべきか。
甚だ僭越な物言いながら、リュミエール本店とも、大阪KARATOとも、ダマンともパンカラトともまったく違う、まさにシェフのキャリアの現時点における集大成があった。
ランチにしてこの内容、昼から何たる非日常を味わってしまったのか!
ありがとうございました。
♪ I Talk To The Wind - King Crimson