羨ましいなどという言葉では生ぬるい
ものすごい本だ、「世界怪魚釣行記」。
度を超した釣り好きが高じ、わずか2年半で会社員を辞めて、それから世界の辺境を訪れて怪魚を釣りまくる著者の武石憲貴氏(ちなみに私と同い年)のあまりのすさまじさには、脱帽するより外にない。
職業作家ではないので文章そのものは洗練されているとは言い難いが、だからこそ伝わってくる生々しさ。
そしておそらくはありのままに限りなく近いであろう実体験を綴る中に顔を覗かせる笑いのセンスはまさに一級品だ。
一歩間違えれば死んでるんじゃないか、という激烈ないきさつと、毒にも薬にもならない間抜けな失敗談をまったく同列に、こともなげにサラリと書き述べている様なんかは、プロの物書きとしての技術ではなく、持って生まれた人柄の一部なんだろうと思う。
羨望という言葉はもはやふさわしくなく、これはもう憧憬と言うしかない。
♪ Still A Fool - Muddy Waters