前のエントリーで記した通り、13日(日)から14日(月)にかけて富山県へ小旅行に行ってきた。
なぜ今あえて富山県なのか、という理由については、実は妻の大学時代のプチ同窓会が13日(日)の昼間に富山で催されるということが決まっており、ああそういうことなら僕も追っかけて夕方富山で妻をピックアップしてどっか近くの温泉でも行こうか、という流れでこのたびの旅行は企図されたのである。
宿泊地は、魚の美味いところが多い日本海沿いの地の中にあってもつとに有名な、氷見にした。
まずは13日(日)の朝、連日のアレで非常に眠かったけれど起きてもろもろ準備を整え、10:30頃家を出た。
ちなみに妻はちょうどそれぐらいの時刻に富山駅に着くような特急電車に乗るためにとうに家を発っている。
久々の長距離ドライヴ、近所のガソリンスタンドで給油した後、西宮ICから名神に乗ってひた走る。
反対側、下り線は早朝に発生した大事故のために通行止めになっている区間があって大変だったみたいだが、僕の走っている上りは至って順調に流れている。
途中、米原から北陸自動車道に入って少し行ったところにある賤ヶ岳SAで昼食をとる。
名物の「鮎ずし」というものが目に付いたので反射的に注文して食べた。
美味かった。
また、このあたりはもうだいぶ気温も低いようで、SA内の紅葉がとてもきれいに色づいていた。
天気も非常によい。
石川県にある徳光SAでも小休止をとったが、ハイウェイオアシスになっているこのSAにはなんと海水浴場が直結しており、シャワー室なんかもあってちょっとびっくりした。
こんなところにも地方色というものは出ているのだなあ。
あとご当地ということで当然(?)売店には“松井秀喜コーナー”があったし…。
今回の宿がある目的地、氷見は富山県北西部に位置しており、その利便性を考慮して妻との待ち合わせ場所はJR高岡駅に設定した。
僕も細かい移動時間が読めなかったので、15時か16時ぐらい、というアバウトな時間の決め方だったが、思った以上にスイスイとクルージングすることができ、14:40頃には高岡ICを降り、15時には充分駅に着きそうな勢い。
妻の方はちょっと遅れているらしく、高岡駅着が16時過ぎになる、ということだったので、その余った時間を利用して僕は駅のほど近くにある、「高岡大仏」というものを見に行った。
行ってみて知ったのだが、これは奈良、鎌倉のものと並んで“日本三大仏”に数えられる大仏なんだとか!
いいもん見た。
16:10、無事に妻と落ち合い、いざ氷見へ向け移動。
しかし場所が場所だからもっと寒いと思っていたんだけど、車に付いている外気温計によると16℃~18℃くらいある。
特に暖かい日だったようだ。
勇んで持ってきた冬の装いも出番なしか。
高岡から氷見への道中は国道160号、氷見街道なるものを通って行き、およそ30~40分ほどの道のり、17時前に目指す宿、「永芳閣」に着いた。
海沿いの小高い丘に建っている。
チェックインして、早速予約していた新館「天遊」の部屋に通された。
和室は10畳ほど、奥にはベッドが2つ置かれた洋室もあるコネクティング・タイプで、広さは25坪とのこと、とても広い。
夕食前にまずは当然お風呂。
浴衣に着替えて露天風呂付きの大浴場へ。
日曜夕だというのに年配客を中心に結構混んでいる。
ゆったりと湯舟に浸かってのんびりした。
ちなみに湯は“ひみ阿尾の浦温泉”。
部屋に戻って千葉ロッテvsサムスンのアジアシリーズ決勝戦をボーっと見ていたら、19時前、夕食が運び込まれ出した。
このたび予約していた夕食コースは、「氷見風懐石」というもの。
ここ永芳閣は、“魚巡りの宿”という異名がついている通り、とにかく魚料理に力を注いでいるようで、このたびのフルコースもそれはそれはすさまじいものであった。
無芸ながらもその献立を列挙してみると、「前菜…炊き寄せ」、「造り…姿入り地魚六種盛り(真鯛姿、がんど鰤、メジ鮪、さざえ、甘海老、白海老)」、「焚合…田毎蒸と秋野菜」、「先吸…銀杏豆腐」、「台物…氷見牛の鉄板焼」、「酢物…鮟鱇の酢の物」、「焼物…のどぐろ切身の塩焼」、「炊合…鰤のかまのあら煮」、「留椀…のっぺい汁」、「御飯…白米(氷見産コシヒカリ)」、「香物…三種盛」、「果物…季節のフルーツ」。
僕ははち切れそうになりながらもなんとかすべて胃の中に収めたが、妻などは到底食べ尽くすことはできない、尋常ならざる量。
もちろん量だけじゃなくて、さすがの富山湾・氷見、都会では値段どうこうじゃなく手に入らないであろう“キトキト”の好素材がまずはすごい。
鰤のかまのあら煮には大根が一緒に合わせられていたが、ブリ大根てこんなに美味いものだったの、ああこれなら相性抜群というのもうなずけるなあ、という絶品だった。
ブリ大根と名が付いた食物はこれまでもたくさん食べてきたけど、そのどれともまったく違う逸品だった。
“関サバ”や“間人ガニ”などと並んで、“氷見ブリ”なんてブランドものがあるのも然り。
晩飯を喰ったらもう一度風呂にでも行こうかな、と思っていたんだけど、食べたらついついそのまま1時間ほど眠り込んでしまった。
もう今日は風呂はやめて寝よう。
…しかし習慣とは恐ろしいもので、体は疲れ脳は休息を欲しているはずなのに、隣で安らかな寝息を立てている妻を横目に布団の中でまんじりともせずにグリグリと2時間ほど眠れぬ時を過ごしてしまい、最終的に寝付いたのは翌2時過ぎ頃かな。
明けて翌日、14日(月)。
それでも朝風呂だけは欠かせまい、と6:30に無理矢理起き上がり、大浴場へ。
晩の1時を境に男湯と女湯を入れ替えるようで、昨晩とは違う方のお風呂だったが、こちらのお風呂の方が良かった。
露天の造りとか、全体のレイアウトとか。
それについては妻と同意見を確認。
8時、朝食。
同じく魚を中心としたメニューで、かますの一夜干しや、一人鍋でグツグツと煮て食べる味噌仕立ての白身魚など、大変美味。
10時過ぎ、チェックアウト。
宿を出て最初の目的地は、道の駅にもなっている「氷見フィッシャーマンズワーフ 海鮮館」。
今朝氷見漁港に揚がったばかりの新鮮な海の幸などが並ぶ、レストランも併設された一大ショップである。
このサイトのコンセプトにも表れているように魚が大好き、魚市場はもちろんスーパーマーケットの鮮魚コーナーですら立ち去りがたい僕のような者にとっては、行かずしてどうする! という類の場所だ。
天気は昨日とは一転、朝からずっと曇っており、さすが北陸といった感の肌寒さ。
現地名ではなんと書かれてあったか忘れてしまったが、1mはありそうな巨大なアカイカや、街のスーパーではちょっと見られないような魚体の色艶と目の透明感を誇るアジやサバ、ハマチなどがとても印象的だった。
もう少し家族が多かったりしたらちょっと買って帰ったりもするんだろうけどなあ…。
さすがに2人暮らしだし、僕も家で食事をとる機会が決して多くはないから海産物の購入は見送り。
次なる目的地は「湊川カラクリ時計」。
ここ氷見は、藤子不二雄A氏の出身地であり、それにちなんで駅の近く、小さな川に掛かる橋にカラクリ時計を設置し、毎時0分に「忍者ハットリ君」の主要登場人物たちの人形がそこから出てきて時を告げるようになっているのだ。
せっかく近くに来たので見ない手はない。
現場に到着したのが11:45頃、12時までまだ少し間があるので隣のうらぶれた商店街を歩いてみたら、同じく藤子不二雄A氏がデザインした各種の魚をモチーフにした人形が立っていた。
「ブリンス」とか「カニ丸」とか「タコ八」とか「エイチョウ」とか。
そばに寄るとセンサーが反応してしゃべるのが面白い。
そして正午が訪れ、無事にカラクリ時計の前で時報を見ることができた。
けたたましいサイレンの音とともに始まったハットリ君、ケムマキらによる寸劇。
あれは若干近所迷惑じゃないか。
「るるぶ」には“地元の人や観光客に大人気”と書いてあったが、観衆は僕ら2人の他には、偶然通りがかったらしいおじさん1人だけだった。
そして次に向かうのは、今日のメインイヴェントとも言える「魚津水族館」。
「氷見フィッシャーマンズワーフ」と同様の理由によって、水族館を見ずして帰るということもありえまい!
水族館のある魚津市は氷見市から見て反対側、富山県の北東部に位置しており、結構距離があるので、高岡北ICから高速道路に乗って移動する。
ついに雨が降り出した。
途中、有磯海というSAで簡単な昼食。
名物のます寿司とぶり寿司がそれぞれおにぎりになったものに、これまた当地名物、白海老のかき揚げがのったうどんを食べた。
それと、この辺りの海岸は“蜃気楼が見える地”としても名を馳せており、それにちなんだ(というにはあまりに強引過ぎるが…)「しんきろうソフト」なる海洋深層水入りのソフトクリームが売っていたのだが、その魔力に抗しきれずに買って食べてしまった。
移動時間はおよそ1時間、14時に魚津水族館に到着。
…うーむ、なんとも言えぬすごい外観だ。
平日・月曜だし、悪天候ということもあってか、客もほとんど入っていないようだし…、大丈夫か?
ところがところが中に入って見学を進めるにつれてその思いは良い方向に裏切られていった。
何とも素晴らしい水族館じゃないか!
入り口入ってすぐにコイやブラックバスを展示しているその大胆さもすごいが、実際収容している生体の種類、数、そして施設の規模ともに、それほど期待していなかっただけに、結果的に僕はとても満足した。
熱帯魚を飼っている身にとっては、メーター級のレッドテールキャット数尾と、2mはありそうなピラルクが混泳している水槽は垂涎モノだし、海生の無脊椎動物ばかりを入れたマニアックな水槽が並んでいる様も、その潔さに敬礼。
また、イシダイを使った輪くぐりやくす玉開けなどを見せる“魚のショー”もとても面白かったし、多数のブリやマダイ、エイなどが群泳する海洋水槽における女性ダイヴァーによる餌付けも見応えがあった。
ペンギンの給餌も見ることができたし、ゴマフアザラシ、ウミガメ、ワニガメ、古代魚、地元の魚介類など、それぞれを満喫した。
何より、金を掛けた演出や規模では他のメジャーな水族館たちには太刀打ちできないという現実を見据えてなのか、いろいろと工夫を凝らしているなあ、という様が見てとれ、感心しきり。
客は全然入っていなかったけど。
雨足はだいぶきつくなってきた。
水族館を出た我々が次に向かった、ここ富山での最終目的地は富山市内、富山駅のほど近くにある和食店「花遊膳」。
この旅における僕の大きな目的の一つに、日本海だけで獲れる深海魚「ゲンゲ」を食す、というものが実はあった。
ものの本で以前読んでから気になっていた代物である。
まったく今回はいい機会となった。
その「ゲンゲ」が食べられる店として当たりを付け、昼のうちに予約を入れていたのだった。
ちなみにこのゲンゲという魚、前述のように深海魚でその上足が早く、地元以外で食べられることはほぼないという。
さらに、ゲンゲ漁というものがあるわけではなく、外道として獲れるものなので必ずしも毎日揚がるとは限らないそうだ。
先ほど訪れた魚津水族館には薄暗い冷水水槽に決して見目麗しいとは言えない各種のゲンゲたちが入れられてジッとしていたが。
魚津ICから再び高速道路に乗って富山ICで降り、いざ市街地へと走らせる。
ほう、富山市内の中心部には路面電車が走っているのだな。
本当に富山駅の正面、道を渡ってすぐのホテル3階に目指す店「花遊膳」はあった。
17時、入店。
おお、かなり綺麗で落ち着いたカンジのいいお店じゃないか。
まだ新しそうだ。
訊いてみたら改装して2年しか経っていないそう。
客席は個室が多い。
会社帰りの宴会とかちょっとした会食にもよく使われているんじゃなかろうか。
ふむふむというわけで注文した品が、「富山湾からの贈り物サラダ」、「カキ石焼きごはん」、「鰤大根」、「がんど(ハマチのこと)かま汐焼き」、そしてもちろん「ゲンゲの唐揚げ」。
やはりこの時期富山といえばブリ、厚めにいっとこうか。
ここでも昨晩と同じく感じたのが、素材のあまりの良さからもたらされるのか、ブリと大根の素晴らしきマッチング。
絶妙。
そしてカキも外せぬであろう。
カキの入った石焼きごはんというのは初めて食べたが、ただただ美味い。
主目的たるべきゲンゲはというと、ううむと口を濁さざるをえない。
あるいは少しクセのある魚なので、美味しく食べられないかも、なんてことを忠告してくれる人もいたが、別に不味いとか口に合わぬとか言うんじゃなくて、あまりに身が薄いのかそれとも本当に風味がイマイチなのでごまかしているのか、とにかく衣の味ばかりで肝心の魚の味がほとんど分からなかった。
ううむ…。
まあ食べたという行為の重みで納得しておこう。
18時過ぎ、店を出ていざ西宮に向けて帰ろうじゃないか。
雨は相変わらず強い。
走り出して1時間ほどしたところで、夕飯後ということもあってかどうしようもなく眠たくなり、たまらず福井県内にある尼御前SAというところで少し休憩を取ったが、それ以降はノンストップで進み続け、22時過ぎ、富山を出てから約4時間後という予想よりも遥かに早い時刻に西宮の我が家に到着したのだった。
1泊2日の走破距離は約918km、久々にアルファ156SWにハードな仕事をさせたような気がする。
♪ 芋虫 - 人間椅子